受付で行き場をなくす胡蝶蘭:贈る前に確かめたい、受け取る側の事情

オフィスの受付カウンターで大きな白い胡蝶蘭の鉢を抱え、置き場所に困っている受付の女性

大きな鉢を抱えた受付の方が、置き場所を探してフロアを歩き回っている。
贈り主が目にすることのない、胡蝶蘭のもうひとつの到着風景です。
立派な鉢ほど、その場で居場所が決まらないことがあります。
フラワーコーディネーターの花澤律子です。
この記事では、受け取る側で起きがちな困りごとを法人ギフトの場面からたどり、注文前に確かめたいことをお伝えします。
その多くは、電話一本と注文時のひと言で防げます。

胡蝶蘭が届いた日、受け取る側で起きていること

お祝いの花を選ぶとき、頭に浮かぶのは花を見て喜ぶ相手の顔だと思います。
けれど法人宛ての場合、最初に鉢を受け取るのは社長でも担当者でもなく、受付や総務の方であることがほとんどです。

置き場所は、届いてから探される

大輪の胡蝶蘭は、写真で見るより大きな花です。
3本立ちで高さ90cm前後、5本立ちなら1m前後という商品も珍しくありません。
受付カウンターに載せれば来客との間に壁ができますし、床に置けば通路に葉や花がはみ出します。

ギフト専門店で納品に伺っていた頃、総務の方に「今週これで3鉢目なんです」と苦笑いされたことがあります。
応接室はもう埋まっていて、その鉢は窓のない会議室の隅に落ち着きました。
花そのものに落ち度はないのですが、贈り主の名前がいちばん人の目に触れない場所へ行ってしまうのは、やはり惜しいものです。

誰宛ての花なのか、すぐには分からない

受付の方は、贈り主の会社名を見ても、社長とどんなご縁があるのかまでは知らないことがあります。
伝票の宛先が会社名だけだと「これはどなた宛てでしょう」と社内で確認が回り、お礼の連絡もそのぶん遅れます。

宛先には部署名と役職、お名前まで入れてください。
立札の社名も略さず書いてもらうと、受け取った方が贈り主を調べる手間がなくなります。

注文の前に「置かれる場所」を想像する

置き場所から逆算して大きさを選ぶ

豪華さから選び始めると、相手の事情はどうしても後回しになります。
先に置かれそうな場所を思い浮かべて、そこに収まる大きさを選ぶと失敗が減ります。
目安は次の表のとおりで、寸法は品種やお店によって差があるため、最後は商品ページの数字を見てください。

置かれそうな場所向いている胡蝶蘭高さの目安見ておきたいこと
受付カウンターミディの3本立ち40〜60cm来客の顔や案内板を隠さないか
小さなオフィス・店舗ミディの3本立ち40〜60cm通路やレジまわりに当たらないか
応接室・役員室ミディから大輪の3本立ち50〜90cm棚やサイドテーブルの奥行きが足りるか
広いエントランス大輪の3本〜5本立ち90〜100cm床に置いても動線をふさがないか

相手がシェアオフィスや小さな事務所なら、予算を理由に無理に大輪を選ばなくても大丈夫です。
私なら、花数の多いミディをおすすめします。
小ぶりでも花がびっしり咲いた鉢はきちんと華やかで、机の端にも置いてもらえます。

聞きにくいときは、総務か秘書の方に尋ねる

驚かせたいお気持ちは分かりますが、法人宛ての胡蝶蘭に限っては、ひと声かけてから贈るほうが喜ばれます。
ご本人に聞きにくければ、秘書や総務の方にこんなふうに尋ねてみてください。

このたびのご移転のお祝いに、お花をお届けしたいと考えております。ご迷惑にならない日時と、受け取りの窓口を教えていただけますでしょうか。

品物や金額まで伝える必要はありません。
聞いておきたいのは、次の4点です。

  • 受け取れる曜日と時間帯
  • 受け取りの窓口になる部署と担当者
  • 置ける場所のおおよその広さ
  • お祝いの品を受け付けているかどうか

届ける日は、相手の忙しさで決める

開店や移転は、当日と前日を外す

マネーフォワードの開店祝いの解説では、店内に置く胡蝶蘭は前日までに届け、来客対応に追われる開店当日は避けるよう勧めています。
同じ解説は開店直前の準備の慌ただしさにも触れていて、開店の1週間ほど前には贈れるよう準備することを勧めています。

ここでひとつ、お店に確かめてほしいことがあります。
1週間前だと内装工事の途中で、受け取る人も空調もない現場があるのです。
移転祝いも同じで、新しい住所に人がいつから入るのかを聞いてから日を決めると安心です。

ビルに入っている会社なら、搬入できる時間帯や受付が開いている時間は建物ごとに違います。
これも先ほどの電話で一緒に聞いておくと、配送の方が入口で立ち往生せずに済みます。

就任祝いは、鉢が重なる日をずらす

人事異動の発表直後や就任日は、同じ方に胡蝶蘭が集中しやすい時期です。
ご本人は挨拶回りで席を外していることも多く、受付の前に鉢が順番待ちのように並びます。

秘書の方に、席に戻られる日を聞いてみてください。
数日空けて届く一鉢は、置き場所を探してもらいやすく、立札の名前もゆっくり見ていただけます。
早さを競うより、落ち着いて受け取ってもらえる日を選ぶほうが、お祝いの気持ちは伝わると私は思います。

休業日をはさまない

土日祝がお休みのオフィスや、定休日のあるお店に届いて持ち戻りになると、花は箱の中で過ごす時間が延びてしまいます。
年末年始は会社ごとに休みの日程が違うので、特に確認が欠かせません。

通販のビジネスフラワーの配送案内によると、同店は花や植物への影響を考えて、お届け日の前日に出荷するのを基本にしています。
お店がそこまで気を配っていても、受け取りでつまずけば台無しです。
お届け日は、相手の予定を確かめてから指定してください。

寒い時期は、届いた後の部屋まで考える

これからの季節に、いちばん気にしていただきたいのが寒さです。
法人向けギフトを扱うイイハナのお手入れ解説は、胡蝶蘭は15度を下回る日が続くと「冬眠状態」になると説明し、オフィスや店舗は夜間に冷え込むおそれがあると注意を促しています。

昼間は暖かいオフィスも、空調が切れた夜や休み明けの朝は別の部屋のようです。
ガラス張りのエントランスに置かれそうな相手なら、金曜の夕方着は避けてください。
週の前半の午前中に届けば、人のいるうちに暖かい場所へ移してもらえます。

寒冷地への冬の配送を止めているお店もあります。
12月以降に東北や北陸へ贈るなら、注文前にお店へ問い合わせておくと確実です。

そもそも受け取れない相手もいる

公務員には贈与のルールがある

人事院の国家公務員倫理審査会は民間企業向けの案内で、国家公務員が「許認可の相手方」「立入検査の相手方」「契約の相手方」などの利害関係者から贈与を受けることなどを禁止していると説明しています。
就任や栄転のお祝いであっても、自社が相手の利害関係者にあたるなら、注文の前に立ち止まってください。

地方公務員については、自治体ごとの条例や規則で定められています。
自社が該当するのか、お花がどう扱われるのかは個別の事情によるので、花屋の立場で私が判断できることではありません。
先ほどの案内には照会先も載っていますので、社内の法務や総務とあわせて確認してください。

民間企業でも「お気持ちだけ」の場合がある

移転や就任のあいさつ状に、お祝いを辞退する旨が書かれていることがあります。
社内規程で取引先からの贈答品を受け取らない会社もあります。
そこへ鉢が届くと、相手は返送の手配や社内への報告に追われることになります。

辞退の案内を見つけたら、花を送らないのが正解です。
手紙や祝電、落ち着いた頃の訪問でも、お祝いの気持ちはきちんと伝わります。
花屋が言うのも変な話ですが、贈らないと決めるのも立派な心遣いだと私は思っています。

届いたあとの手間を、先回りして減らす

開封と片付けを相手に任せない

宅配の胡蝶蘭は、背の高い箱に入って届きます。
受け取った方が箱を開け、花を守る薄紙を外し、大きな段ボールをつぶして捨てるところまでが、見えない作業です。

先ほどのビジネスフラワーには、スタッフが手持ちで届け、開封が要らず、お届け先と相談して設置し、梱包材の回収まで手伝う配送があります。
対応する商品や地域には限りがあるので、相手が忙しい時期なら、こうした配送を選べるかを注文時に聞いてみてください。

世話の手順は、カードにひと言添える

オフィスの胡蝶蘭は、担当が決まらないまま誰も水をやらなかったり、親切な何人かが次々に水をやったりしがちです。
イイハナは、水やりは1週間から10日に一度、コップ1杯弱で十分だとし、オフィスなら曜日や日にちを決めておく方法を紹介しています。
ラッピングも花を傷つける原因になるため、外すよう勧めています。

包みを解いてよいのか迷う方は多いので、メッセージカードに次のように添えておくと親切です。

水やりは10日に一度、コップ1杯ほどで十分です。ラッピングは外していただいて構いません。お礼のご連絡はどうぞお気遣いなく。

花が終わったあとのことまで考える

花が終わると、鉢と水苔、支柱やワイヤーが残ります。
陶器の鉢なら分別の手間も増えますし、それを片付けるのも、たいていは鉢を受け取った同じ方です。

近頃は、支柱から鉢まで一般ごみとして処分しやすいよう作られた胡蝶蘭を扱うお店も出てきました。
ごみの分け方は地域や建物によって違うものの、選択肢として知っておいて損はありません。

まとめ

同じ値段の胡蝶蘭でも、通路の邪魔になる一鉢と、受付の顔になる一鉢があります。
分かれ目になるのは、注文の前に受け取る人の一日を想像したかどうかです。
次のことだけ、確かめてみてください。

  • お祝いの品を受け取れる相手か、辞退の案内が出ていないか
  • 置かれそうな場所に収まる大きさか
  • 受け取りの窓口と、人がいる曜日や時間帯
  • 休業日や寒さで花を長く待たせない日程か
  • 開封、片付け、水やりの負担を減らす手配ができるか

長くこの仕事をしてきて感じるのは、受付の方に「助かりました」と言っていただけた花ほど、よく見える場所に長く飾られているということです。
迷ったら、まず相手先の総務に一本お電話を。
花を選ぶのは、そのあとでも間に合います。

出典

本記事の執筆にあたり、以下の情報を参考にいたしました。

  1. 経済団体、民間企業等の皆様へ – 人事院 国家公務員倫理審査会
  2. 開業や開店のお祝いに人気の贈り物・プレゼントは?相場やマナーについても解説! – マネーフォワード クラウド
  3. オフィスや店舗にいただいた胡蝶蘭を長く楽しめるお手入れ法 – イイハナ・ドットコム 法人向けギフト
  4. 配送方法・料金 – ビジネスフラワー

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